移りゆく季節に光をあてて、
「そうめんのある日常」をお届けする
小さな情報メディアです。
「そうめん」という懐の深い食材が、
あわただしい現代社会の
日常に寄り添って、
良き相棒となってゆきますように。

蝉の鳴き声がピークを迎えた。今年の夏も暑くて暑くて、どうしてもそのことから意識が逃れられない。どのようにして少しでも心地よく過ごそうか、毎日そのことばかり考えてしまう。
朝、まだ眠そうな顔で居間へやってくる子どもたちは、いの一番に冷蔵庫を開けて麦茶を飲み、切っておいたスイカやトマトを頬張る。身体の熱がすっと引くのだろう、さっきまでぼんやりしていた顔が急に生き生きとして、そのまま賑やかに遊びはじめる。床には読みかけの図鑑や色鉛筆。かと思えば虫籠を抱え、勢いよく外へ飛び出していく。片づけたはずの籠にはまた洗濯物が増えていて、夏休みというものを毎日実感する。
お昼は何にしようか。そんなことを考えながら台所と居間を何度も行き来しているうちに、一日はあっという間に過ぎていく。慌ただしい毎日だけれど、この暑さに子どもたちの笑い声が混じると、不思議と夏らしい景色に思えてくる。
八月になると、台所では火を使う時間をできるだけ短くしたくなる。ぐつぐつ煮込む料理より、切るだけ、和えるだけのものが増えていく。きゅうりや茄子、ズッキーニ。みずみずしい夏野菜にも、ずいぶん助けられている。
夕方、陽が少し傾いたころ、そうめんを茹でるために湯を沸かす。この季節の定番は、冷たい出汁を張ったひやかけそうめんだ。昆布と鰹で取った出汁をよく冷やし、薄く輪切りにしたすだちをたっぷり浮かべる。青く鋭い香りがふわりと立ちのぼると、一瞬だけ山の風が通り抜けたような気持ちになる。
沸騰した鍋の前はむっと暑いのに、白い麺を冷水で洗いはじめるころには、気持ちまでひんやりしてくる。子どもたちは「いい匂い」と言いながら箸を伸ばし、大人はようやく肩の力を抜く、豊かな夕暮れ。
窓の外では、まだ蝉が鳴いている。それでも、冷たい出汁を飲み干すころには、八月もそう悪いものではないと思えてくる。
ひやかけすだちそうめん
すだちの香りと酸味で暑さが吹きとぶ、夏を感じるひやかけそうめん。
材料四人分
水
1000cc
昆布
1枚(5g)
みりん
50cc
薄口醤油
50cc
塩
小さじ1と1/2
かつお節
2つかみ(20g)
そうめん
4束
すだち
4個
作り方

「そうめん手帖」とは
移りゆく季節に光をあてて、
“そうめんのある日常”をお届けする
小さな情報メディアです。
“そうめん”という懐の深い食材が、
あわただしい現代社会の日常に寄り添って、
良き相棒となってゆきますように。