移りゆく季節に光をあてて、
「そうめんのある日常」をお届けする
小さな情報メディアです。
「そうめん」という懐の深い食材が、
あわただしい現代社会の
日常に寄り添って、
良き相棒となってゆきますように。

梅雨が近づいている。やっと心地よい春が訪れたと思ったら、気づけば夏のように暑い日が増え、まもなく連日の雨に心が曇り始める。私は昔から雨が苦手だ。恵みの雨だと分かっていても、梅雨入りすると毎年少し気持ちが沈む。移動は不自由になるし、靴が濡れると足元がどうにも不快だ。長靴やレインシューズも、私には馴染まない。だから、誰もが雨を嫌うものだと思っていた。けれど大人になって、雨が好きだという人に何人も出会った。特に「雨音が好きなのだ」と言う人が多い。ひとり静かに聞く雨音は、心を落ち着かせるのだという。私もそんなふうに言ってみたいなと思いながらも、私は、いつだって明るい太陽と青空に焦がれている。
それでも、雨の記憶の中には、少し特別なものもある。かつて過ごした極寒のフランス・ブルターニュ地方では、日本の梅雨のように、来る日も来る日も雨が降っていた。最初は気分も沈んだが、「この街のこの季節はこんなものだよ」と、ほとんど傘も差さないフランス人たちに軽やかに言われるうち、それなりに諦めはついた。それでも雨の中、石畳を歩くたび、頼りない折りたたみ傘からはみ出た肩は濡れて寒く、次は春に来ようと心に誓った。
時を経て昨冬のとある朝。ごみを出そうと外へ出ると、雨がしとしとと降っていて、空気がひんやりと湿っていた。その瞬間、身体の奥をブルターニュの風が一気に吹き抜け、あの時間が鮮やかによみがえった。冷たく暗かったはずの雨の日々が、いつの間にか身体に深く染み込み、時空を超えて、美しい記憶として帰ってきたのだ。瞬く間に、懐かしく愛おしい気持ちが心に満ち満ちた。どんな経験にも意味があり、心を開いて過ごした時間は、やがて人生を豊かに彩る記憶になるのだと身をもって知った。
今年も庭で、一昨年の母の日にもらった紫陽花がぽつぽつと咲き始めている。きっとこの梅雨も、雨の中でいきいきと鮮やかに花を広げていくだろう。歳を重ねるごとに、愛でられるものがどんどん増えていく。その喜びを日々噛み締めながら、私は柔らかな幸せの中で、静かに心へ差し込む光を感じている。
万願寺唐辛子と牛肉のヤムウンセン
バジルの香りが爽やかな、元気が湧いてくるタイ風そうめんサラダ。
材料四人分
赤玉ねぎ
1個
万願寺唐辛子(斜め切り)
4本
牛肉(切り落とし)
200g
油
大さじ1
塩
ひとつまみ
そうめん(半分に折る)
1.5束
バジル
1パック
青とうがらし(なければ鷹の爪)(薄くスライス)
1本
ナンプラー
大さじ2
ライム(なければレモン)
1個
砂糖
大さじ2
作り方

「そうめん手帖」とは
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